般若心経
概要
般若心経(はんにゃしんぎょう)は、正式には「般若波羅蜜多心経」といいます。 わずか278文字という短さながら、大乗仏教の根本思想である「空(くう)」の教えを凝縮した経典です。 宗派を超えて日本で最も親しまれており、葬儀や法事、日々の勤行で読誦されます。
成立と伝来
原典は膨大な「大般若経」600巻のエッセンスを抽出したものです。 紀元後2~4世紀頃にインドで編纂され、7世紀に玄奘三蔵によって中国に翻訳されました。 奈良時代に日本へ伝来し、今日まで多くの人々に唱えられてきました。
核心的な教え
般若心経の最も有名な一句は「色即是空 空即是色」です。 「色」は目に見える物質世界を、「空」は固定的な実体がないことを意味します。 形あるものはすべて実体を持たず、相互の関係性の中で成り立っているという教えです。
三つの柱
- 空の思想:すべてのものに固定的な実体がないという真理
- 智慧の完成(般若波羅蜜多):「般若」は智慧、「波羅蜜多」は彼岸に至るという意味。悟りへの道を示します
- 恐れからの解放:経典の最後にある真言によって、苦しみから解放され悟りへ導かれるとされます
全文現代語訳
玄奘三蔵訳「般若波羅蜜多心経」の全文現代語訳
経題
仏説摩訶般若波羅蜜多心経
仏が説かれた、偉大なる智慧の完成(彼岸に至る智慧)の心髄を説く経典。
観自在菩薩行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄
観自在菩薩(観音菩薩)が、深い智慧の境地を修行されているとき、人間の心身を構成する五つの要素(色・受・想・行・識)に固有の実体はないと照らし見て、あらゆる苦しみと災厄から解脱されました。
舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識亦復如是
舎利子よ。物質的なものは空と異ならない。空は物質的なものと異ならない。物質的なものはすなわち空であり、空はすなわち物質的なものである。感覚(受)・表象(想)・意志(行)・認識(識)もまた同じである。
※「色」は物質・形あるもの、「空」は固定的な実体のないことを指します。
舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減
舎利子よ。このすべての現象の空なる姿は、生じることも滅することもなく、汚れることも清らかになることもなく、増えることも減ることもない。
是故空中 無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界乃至無意識界
したがって、空の中には、物質もなく、感覚・表象・意志・認識もない。眼・耳・鼻・舌・身体・意(六根)もなく、色・声・香・味・触・法(六境)もない。眼の認識の領域から、意識の領域に至るまで、いずれも存在しない。
無無明亦無無明尽 乃至無老死亦無老死尽
無明もなく、無明が尽きることもない。乃至、老いと死もなく、老いと死が尽きることもない。
※十二因縁(無明→行→識→名色→六処→触→受→愛→取→有→生→老死)のすべてに実体がない。
無苦集滅道 無智亦無得 以無所得故
苦・集・滅・道の四聖諦もない。智慧もなく、得るものもない。何も得るものがないゆえに。
菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒夢想 究竟涅槃
菩薩は、般若波羅蜜多に依るがゆえに、心に妨げるものがない。妨げがないゆえに、恐れもない。あらゆる逆さまの考えや妄想から遠く離れ、究極の涅槃に至る。
三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提
過去・現在・未来のすべての仏も、般若波羅蜜多に依るがゆえに、この上ない正しい悟り(阿耨多羅三藐三菩提)を得られた。
故知般若波羅蜜多 是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪 能除一切苦 真実不虚
故に知るべし。般若波羅蜜多は、大いなる神呪であり、大いなる明呪であり、無上の呪であり、比類なき呪である。よく一切の苦を除き、真実にして虚妄ではない。
故説般若波羅蜜多呪 即説呪曰 羯諦羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶
羯諦羯諦(ぎゃていぎゃてい) 波羅羯諦(はらぎゃてい) 波羅僧羯諦(はらそうぎゃてい) 菩提薩婆訶(ぼじそわか)
故に般若波羅蜜多の呪を説く。すなわち呪を説いて言う。往け、往け、彼岸へ往け、彼岸へ全く往け、悟れ、幸いあれ。
般若心経
智慧の心髄を説く経典(ここに説き終わる)。
まちかど般若心経とのつながり
このサイトでは、般若心経の278文字を街で見つけた写真で埋めていきます。 看板、石碑、暖簾など、日常の風景に隠れた文字を集めることで、 お経と街との新しいつながりを体験できます。